シニア向け 玄関・廊下片付け:心と体の負担にならない安全な空間づくり
シニア向け 玄関・廊下片付け:心と体の負担にならない安全な空間づくり
ご自宅の玄関や廊下は、毎日必ず使う場所であり、家全体の印象を決める「顔」とも言えます。しかし、郵便物や靴、つい置きっぱなしにしてしまう荷物などで、気づけばモノが溢れがちになりやすい場所でもあります。
特にシニア世代の方々にとって、玄関や廊下の乱雑さは、単なる見た目の問題だけではありません。つまずきや転倒の原因となり、思わぬ怪我につながる危険性も潜んでいます。
「片付けたいけれど、どこから手をつけて良いか分からない」「体力的にきつそう」「思い出の品ではないけれど、捨てるのはもったいないと思ってしまう」…そのようなお気持ちを抱えている方もいらっしゃるかもしれません。
このページでは、「かるい暮らし 片付け手帖」のコンセプトである「心と体の負担にならない」片付け術に沿って、シニアの皆様が無理なく、そして安全に玄関や廊下を快適な空間にするための方法をご紹介します。ご自身のペースで、できることから始めてみましょう。
なぜ玄関・廊下の片付けがシニアに重要なのか
玄関や廊下は、家の中と外をつなぐ通路であり、家の中でも特に安全性が求められる場所です。ここにモノが多いと、以下のようなリスクが高まります。
- つまずきや転倒のリスク: 床に置かれた靴、傘、荷物などが足に引っかかり、転んでしまう危険があります。
- 避難経路の確保: 万が一の災害時など、速やかに安全な場所に移動するためには、玄関や廊下が障害物のない状態であることが重要です。
- 心理的な負担: モノが散らかっている場所を見ると、それだけで気持ちが落ち着かず、ストレスを感じてしまうこともあります。片付いた空間は、心にゆとりをもたらしてくれます。
玄関や廊下を整理整頓することは、日々の暮らしの安全性を高めるだけでなく、心穏やかに過ごすためにも大切なことなのです。
片付けを始める前の準備と心構え
片付けを始める前に、少しだけ準備をしましょう。これが、負担を減らす第一歩です。
- 無理のない範囲を決める: 一度に全てを片付けようとせず、「今日は靴箱の一段だけ」「玄関のたたきのモノだけ」など、ご自身ができる範囲を決めましょう。小さな目標設定が、達成感につながります。
- 必要な道具を準備する:
- ゴミ袋(可燃用、不燃用など)
- 箱や袋(一時的にモノを分類するため)
- ぞうきんやウェットシート(掃除用)
- 必要であれば、立ったまま作業できるほうきやちりとり
- 注意: 高い場所のモノを取る際に、不安定な踏み台や椅子を使うのは大変危険です。無理な姿勢での作業は避けましょう。
- 休憩を計画に入れる: 片付けは想像以上に体力を使います。始める前に「〇分作業したら休憩する」と決めておくと、疲れすぎるのを防げます。
- 完璧を目指さない: 最初から完璧な状態にする必要はありません。まずは安全な通路を確保することを最優先に考えましょう。
心と体の負担にならない玄関片付けのステップ
玄関の片付けは、まず「たたき」と呼ばれる土間部分から始めると取り組みやすいかもしれません。
ステップ1:たたきに出ているモノを一時的に全て出す
たたきに出ている靴や傘、その他置かれているモノを、一度全て玄関の外や、片付けやすい場所に移動させます。
ステップ2:必要・不要を分ける(靴の場合)
- 毎日使う靴: 今シーズン履いている靴や、よく履く靴を分けます。
- 時々使う靴: 冠婚葬祭用、特定の季節だけ使う靴などを分けます。
- ほとんど使わない靴: サイズが合わない、古くなった、履く機会がない靴などを分けます。
「ほとんど使わない靴」の中で、「これからも履くことはないだろう」と感じるモノについては、手放すことを検討しましょう。
ステップ3:手放す方法を考える
- 捨てる: 明らかに傷んでいる、もう履けない靴は感謝して手放します。自治体の分別方法に従ってください。
- 譲る: 家族や友人の中で、もし必要としている人がいれば声をかけてみるのも良いでしょう。
- 寄付する: まだ使える状態であれば、靴の寄付を受け付けている団体もあります。
- リサイクル: 素材によってはリサイクルできる場合もあります。
「もったいない」と感じるお気持ちも大切にしながら、ご自身の気持ちがかるくなる方法を選んでください。
ステップ4:靴箱の中を整理する
たたきが片付いたら、靴箱の中に取り組みます。一段ずつ、あるいは扉一枚分など、小さな範囲から始めましょう。中に入っている靴を全て出し、ステップ2、3と同じように必要・不要を分けていきます。
靴箱の中の棚板を調整したり、シューズスタンドを活用したりすることで、収納力が上がり、靴が乱雑になりにくくなります。
ステップ5:たたきや靴箱を掃除する
モノがなくなったら、掃除のしやすい状態です。たたきを掃いてから拭き掃除をしたり、靴箱の中を拭いたりして、綺麗にしましょう。
ステップ6:使うモノを戻す
毎日使う靴や時々使う靴を、靴箱に戻します。取り出しやすい場所に、よく使うモノを配置するのがポイントです。
心と体の負担にならない廊下片付けのステップ
廊下には、つい「とりあえずここ置いておこう」と仮置きされたモノが溜まりがちです。廊下の片付けも、小さな区画に分けて進めるのが負担になりません。
ステップ1:小さなエリアを区切る
「この壁際だけ」「この曲がり角まで」など、片付ける範囲を狭く区切ります。
ステップ2:エリア内のモノを全て出す
区切ったエリアに置かれているモノを、一時的に安全な場所に移します。
ステップ3:必要・不要・移動を分ける
- 今その場所に必要なモノ: (基本的に廊下には置かない方が安全ですが、手すりなど、どうしても必要なモノは除きます)
- 本来別の場所にあるべきモノ: 今すぐ元の場所に戻すか、後でまとめて戻すか決めます。
- 不要なモノ: 処分や譲ることを検討するモノ。
廊下は基本的に「モノを置かない場所」と考えるのが、安全性を確保する上で最も重要です。
ステップ4:手放す方法を考える、元の場所に戻す
不要と判断したモノは、玄関でご紹介した方法などを参考に手放します。本来の場所に戻すべきモノは、無理のない範囲で戻しましょう。一度に全て戻すのが大変なら、後でまとめて行うリストを作っても良いでしょう。
ステップ5:床を掃除する
モノがなくなったら、床を丁寧に掃除します。掃除機をかけたり、拭き掃除をしたりして、床を安全で清潔な状態にしましょう。
片付けを続けるためのヒント
片付けは一度で終わりではありません。安全で快適な状態を保つために、以下のヒントを参考にしてみてください。
- 「ついでに」片付ける習慣: 郵便物はすぐに必要なモノ以外は別の場所に移動させる、使った傘は玄関で開いて乾かしてからしまう、など「ついでに」できる小さなアクションを取り入れましょう。
- モノの「定位置」を決める: よく使うけれど、ついつい廊下に置いてしまいがちなモノ(例: 買い物カート、杖など)の置き場所を決めると、散らかりにくくなります。壁に固定できるフックなども活用できます。
- 家族に協力をお願いする: もしご家族が近くにいらっしゃる場合は、高い場所の片付けや重いモノの移動など、大変な作業を手伝ってもらうことを検討しましょう。
- 完璧ではなく「安全」を優先: 床にモノがなく、安全に歩ける状態をキープすることを最優先目標にしましょう。見た目の美しさは二の次で大丈夫です。
まとめ:安全な空間がもたらす心のゆとり
玄関や廊下の片付けは、体力的な負担や、どこから手をつけるかという迷いから、つい後回しにしてしまいがちな場所かもしれません。
しかし、ご紹介したように、小さな範囲から始め、休憩を挟みながら、無理のないペースで進めることができます。そして、片付いた玄関や廊下は、つまずきの心配が減り、外出や帰宅がより安全で快適になります。また、家全体の風通しが良くなったように感じられ、心にもゆとりが生まれるでしょう。
「これなら自分にもできそうだ」と感じていただけたら嬉しいです。安全で心地よい玄関・廊下空間で、かるやかな毎日をお過ごしください。